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都立高校入試の作文、「自分の体験」を書いたのに評価されないのはなぜ?本文と意見をつなぐ練習

作文と短いメモを見比べて書き直す中学生と、隣で話を聞く保護者の水彩画。

こんにちは。国語専門塾 国語ゼミの編集部です!

自分の体験を書き、指定された字数にも収めた。それなのに、作文には「本文を踏まえましょう」「自分の意見とのつながりを説明しましょう」と指摘されている。お子さんの答案を見ても、どこを直せばよいのか判断しにくいことはないでしょうか。

もっと印象的な出来事を書けばよいのか。部活動や学校行事での大きな成功体験が必要なのか。そう考える前に、確かめたいことがあります。その体験が、設問に対するどの意見を、どのように支えているかです。

この記事では、都立高校の共通問題を使って国語の作文を練習しているご家庭に向けて、本文・体験・意見をつなぐ方法を紹介します。推薦選抜の作文・小論文ではなく、学力検査の国語で扱われる作文を念頭に置いています。保護者の方が専門的な採点をするためではなく、書き直す箇所を本人と一緒に見つけるための手がかりです。

体験を書くだけでは、意見の根拠にならない

東京都教育委員会が公表した2026年度(令和8年度)の国語の採点資料では、大問4・問5について、指定テーマに沿った意見、筆者の考えの理解、意見を支える具体的な経験・見聞といった点を確認することが示されています。東京都教育委員会「国語 採点のポイント」

ここから、学習の際にも「体験が書いてあるか」だけではなく、「その体験が意見の理由になっているか」まで見る必要があると考えられます。

たとえば、「私は文化祭で案内係をしました」は、何を経験したかという説明です。それだけでは、相手に伝わる説明について何を考えたのかはわかりません。そこで起きたことのどこに注目し、そこから何が言えると考えたのかを補って、初めて意見との関係が見えてきます。

なお、公表資料では、各学校が採点のポイントを踏まえて部分点の基準と点数を定めるとされています。以下の練習例に対して、一律に「ここを書けば何点」とは言えません。実際の評価が伸びない理由も、本文と答案を見ずには判断できません。

本文を踏まえるとは、筆者の言葉を写すことではない

先に、何について意見を書くのかを確かめる

体験を探し始める前に、設問が何についての意見を求めているかを短く言い直してみます。「学校行事について」では広すぎても、「相手に伝わる説明をするために大切なこと」なら、選びたい場面が絞られます。

次に、その対象について本文がどのような考えを示しているかを確かめます。「伝える」という単語だけを拾うのではなく、「相手が知っていることに合わせて伝え方を選び直す」といった、意味のまとまりで捉えることが大切です。

筆者の表現を答案に引用する方法もありますが、引用を置くだけで本文を踏まえたことになるわけではありません。反対に、同じ言葉を使わなくても、本文の考えを正確に捉え、それと関係する自分の意見を説明することはできます。

整理するときは、次の三つを短いメモにしてみましょう。

確かめること メモの役割
本文の考え 設問の対象について、筆者は何を述べているか。
体験の事実 どんな場面で何をし、何が起きたか。
自分の意見 その出来事のどこから、何が大切だと考えるか。

三つを三段落にするという指定ではありません。本文の考えを踏まえ、体験を根拠として自分の意見を説明できるかを確認するための整理です。

字数や材料の条件は、実際の設問で確認する

2026年度の共通問題では、文章を読んだ授業で、対話によって新しいものが生まれることをテーマに意見を発表する場面が設定されています。具体的な体験・見聞を含め、200字以内で話す内容を書く指示があり、字下げや改行時の空欄、句読点なども字数に含めます。2026年度 国語の検査問題・大問4問5

これはその年度の条件です。別の年度や選抜方式に取り組むときは、意見の対象、使える材料、字数などを、その問題で確かめてください。翌年度のテーマや条件が同じだと決めて練習することは避けましょう。

また、体験だけでなく見聞も使える指示なら、本人が実際に見たり聞いたりした出来事も候補になります。大きな受賞歴や特別な活動を探す前に、学校や家庭での身近な場面と、設問との関係を見てみてください。

体験談が問いから外れる二つのケース

同じ言葉が出てくる体験を選んでいる

「相手に伝わる説明」がテーマなのに、「文化祭で友人と協力して頑張った」という話だけを書いたとします。文化祭では人と話す機会があっても、それだけでは、伝わる説明について考える材料になっているとは限りません。

この場合は、体験をすぐに捨てる必要はありません。「何を説明したのか」「相手がわからなかったのは何か」「どう説明を変えたのか」と場面を絞ると、問いに関係する部分が見つかることがあります。

本人の体験にそうした場面がなければ、別の経験を選び直します。使いたい体験に合わせて問いを変えたり、都合のよい出来事を足したりしないことが大切です。

出来事の説明で終わり、意見との関係がない

体験自体は問いに合っていても、「相手がわかってくれた。うれしかった」で終わると、なぜ伝わったのか、そこから何を考えたのかが読み手に伝わりません。

「この経験から、努力が大切だと思った」と続けても、体験のどの部分が努力の大切さを示すのかが曖昧な場合があります。出来事の後に感想を足すだけでなく、その出来事が意見を支える理由を説明する必要があります。

この二つは、見直す際の例です。ほかにも本文の読み違いや条件の見落としが重なっている場合があるため、体験の書き方だけが原因だとは決めつけないようにします。

同じ体験を使った二つの答案を比べる

以下は説明のために作った、架空の課題文・設問・体験・答案です。2026年度の実問題や、その模範解答ではありません。

練習用の課題文

自分には当たり前のことでも、相手が同じように知っているとは限らない。伝えたい内容を並べるだけでは、必要な情報が届かないことがある。相手が何を知り、どこで迷っているかを確かめることで、伝え方を選び直せる。

設問

筆者の考えを踏まえ、「相手に伝わる説明」について、あなたの考えを自分の体験を挙げて200字以内で書きなさい。

ここでは、校内の呼び名では伝わらず、地図と順序を使った説明で伝わった、という体験を使います。

努力の感想に結び付けた答案

私は、相手に伝わる説明をするには、一生懸命に準備することが大切だと思う。文化祭で教室の案内係をしたとき、初めて来た人に場所を聞かれた。校内で使う呼び名で説明したが、伝わらなかった。そこで地図を見せ、入口から順に説明すると、相手は迷わず進めた。私は前日も遅くまで準備していて、本番でも役目を果たそうと頑張った。この経験から、何事も最後まで諦めずに努力すれば、人に伝えられると学んだ。

体験は具体的で、地図を使って説明を変えたことも書けています。しかし、はじめと終わりに置かれた主張は、準備や努力の大切さです。本文が着目する、相手の知識や理解に合わせた伝え方との関係が十分に説明されていません。

努力を大切に思うこと自体が問題なのではありません。この体験で伝わるようになった変化を、どの意見の根拠として説明するかが課題です。

相手に伝わる条件を説明した答案

私は、相手に伝わる説明には、相手が知っていることに合わせて伝え方を変える姿勢が必要だと思う。文化祭の案内係で、初めて来た人に校内の呼び名で教室の場所を説明したが、伝わらなかった。そこで地図を見せ、入口から順に説明すると、相手は迷わず進めた。自分には通じる呼び名も、初めて来た人には手がかりにならなかった。この経験から、自分の常識を前提にせず、相手の理解に合わせて説明を選び直すことが大切だと考える。

後の答案では、夜遅くまで準備した説明を削り、初めて来た人には校内の呼び名が手がかりにならなかった、という読み取りを加えています。それに合わせて、はじめと終わりの主張も直しました。

変えたのは体験の立派さではなく、体験から説明する内容です。 前の答案にもあった「説明を変えると伝わった」という事実を、相手の理解に合わせることの大切さへ結び付けています。二つとも200字以内ですが、長さだけで良し悪しを比べているわけではありません。

これは改善の一例であり、唯一の書き方ではありません。また、この一度の体験で、どんな相手にも必ず伝わる方法が証明されたわけではありません。体験から考えたこととして、問いに合う範囲で説明しています。

相手に合わせて伝え方を選ぶという本文の考えと、文化祭で説明を変えた体験を、自分の意見へ結び付ける関係図。
架空の練習問題の整理例です。三つの枠は、答案の順番や段落数を指定するものではありません。
画像をタップすると拡大できます(新しいタブで開きます)。
比べる点 前の答案 後の答案
体験のどこを見るか 準備し、最後まで頑張ったこと 校内の呼び名が通じず、説明を変えたら伝わったこと
体験から述べる意見 諦めずに努力すれば伝えられる 相手の理解に合わせて説明を選び直すことが大切
本文との関係 相手の知識や理解との関係が十分に説明されていない 相手によって知っていることが違う、という本文の考えに対応する
同じ道案内の体験を、努力の感想で結ぶ答案と、相手の理解に合わせるという意見で結ぶ答案の比較。
架空の答案の末尾を抜き出した比較です。本文の改善例では、末尾だけでなく冒頭の主張と体験の説明も直しています。
画像をタップすると拡大できます(新しいタブで開きます)。

家庭では「この体験は何の根拠?」を一問だけ確かめる

お子さんの作文を見直すときは、まず一題だけ、設問と本文、最初の答案を並べます。保護者の方が全文を書き直したり、点数を付けたりする必要はありません。

本人に「この体験から、何が大切だと言いたい?」と聞き、続けて「そう考えたのは、体験のどの部分?」と確かめてみます。先ほどの例なら、「相手に合わせて説明を変えることが大切」「呼び名では伝わらず、地図を使うと伝わったから」とつながれば、書き直す方向が見えてきます。

短いメモは、次の程度で十分です。

メモ 例
本文の考え 相手が知っていることに合わせて、伝え方を選び直す。
体験の事実 校内の呼び名では伝わらなかったが、地図と順序を使うと伝わった。
意見を支える説明 自分には通じる言葉でも、相手には手がかりにならないことがある。

そのうえで、体験と意見をつなぐ一文を本人に書き直してもらいます。「この経験から」の後だけ直すと、冒頭の意見と食い違う場合があるため、最後に答案全体も読み返します。

書きたい内容が字数の上限を超えるなら、出来事の細かな経緯や同じ感想の繰り返しを整理し、意見の理由がわかる部分を残します。原稿用紙では、設問の指示に従って空欄や句読点も含めて確認してください。

うまく説明できない場合は、無理に保護者の考えを言わせる必要はありません。「本文のこの文がわからない」「この体験が使えるか判断できない」と、疑問を残して先生に相談できます。負担が大きい日は、疑問の箇所に印を付けるだけでも構いません。

別の問題でも、体験を選び直せるかを見る

一題を書き直したら、まだ取り組んでいない別の問題で、設問の対象と本文の考えを確かめ、体験を選ぶところまで試してみましょう。毎回、文化祭や部活動の同じ話を使う必要はありません。

同じ体験が別の問いに使える場合もありますが、どの場面に注目し、何を説明するかは変わります。用意した作文を当てはめるよりも、今回の問いに対して、その体験が何を示せるかを確認します。

書き直した答案を覚えたことと、別の問題で自分で組み立てられることは別です。次の問題では、体験を選んだ理由を短く説明できるかまで確かめてください。

条件を満たしても評価が伸びないときの相談材料

字数や体験を入れる条件は満たしているのに指摘が続く場合、本文の考えの読み取り、意見の対象、体験からの説明のどこに課題があるかを見てもらうと、練習を絞りやすくなります。

相談には、問題文・設問・最初の答案・先生のコメント・書き直した答案をそろえます。解説や公表されている採点資料があれば、それも添えてください。「どこを直したか」と「まだ判断できない箇所」がわかると、相談の焦点が具体的になります。

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体験の立派さより、問いとのつながりを確かめる

体験を書いた作文を見直すときは、まず「この出来事は、どの意見の根拠になっているか」を確かめてみてください。身近な体験でも、本文の考えと関係する場面を取り出し、そこから何を考えたかを説明する練習はできます。

次に取り組むのは、手元の一題で体験と意見をつなぐ一文を見つけることです。つながりが見えにくければ、本文・体験・意見を短くメモにし、その一文から書き直してみましょう。

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